夜空と陸とのすきま

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ハロー、アメリカ/J・G・バラード

ハロー、アメリカ (創元SF文庫)

20世紀末に石油が枯渇しエネルギー危機におちいった21世紀初頭、アメリカ合衆国は砂漠とかした。誰もいない砂のニューヨークに上陸した探検隊は西を目指すが…というお話。

前半は海水に沈んだ自由の女神像の衝撃と無人のニューヨークからのGo West、食料も水もない砂漠のアメリカ大陸でのサバイバルで徐々に狂っていく探検隊。でも生き残った原住民もいて、ギャングスター族、アストロノート族、ギャンブラー族、ゲイ族、プロフェッサー族と職種カテゴリー分けになっていて面白い。女の子は素敵なコピーを作ってくれるからゼロックスって名前をつけるんだって。なんじゃそりゃ。

後半、ラスベガスになんとか到着し、そこでモンローやシナトラのホログラムステージが登場。このシーンは観たことがあるぞ『ブレードランナー2049』がまさに同じく砂まみれのラスベガスでホログラムステージ中にデッカード登場したとこ、あのシーンはJ・G・バラードへのオマージュだったに違いない、絶対そうだと勝手に判断して萌える。

そして西海岸では自称大統領とマッドサイエンティストが登場して、バラード節炸裂。突然高性能な兵器が出てくるので、それまでスチームパンクだったのに急にヤマトの波動砲になったような違和感。なんだかよくわからないうちに話が終わってしまったけれど、バラードの屈折したアメリカ愛が溢れる作品でした。

本書『ハロー・アメリカ(1981)』に出てくる自称大統領は第45代大統領なんですが、現実の45代大統領はドナルド・トランプなんですね。核のルーレットで遊ぶ姿とかもう予言的中で震えるわ。

 

宗教がつねに砂漠で始まったわけが、ぼくには理解できるー砂漠こそ、人の心の延長みたいなものなのだ。荒野であるどころか、どの岩も平うちわサボテンも、どのほりねずみもばったも、あらゆることが可能な魔法の領域、人の脳の構成要素であるように見える。この白さもまた、いまぼくが仲間をそこへ導こうとしている、何か新たな真実に近い者のような気がしてならない。

 

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