夜空と陸とのすきま

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渚にて 人類最後の日/ネヴィル・シュート

渚にて 人類最後の日 (創元SF文庫)

核戦争が勃発し、死滅した北半球。放射性物質は南下して南半球に迫り来る。合衆国の原潜<スコーピオン>は、一縷の望みをかけて生存者を探しに出航する。一方、かろうじて生き残ったオーストラリアの人々は人類最後の日をいかに迎えるのか…という終末SFの名作。

世情が落ち着かないせいか読み終えてとても気が滅入ってしまった。終末物といえば、新井素子の『ひとめあなたに...』や、三浦しをんの『むかしのはなし』とか古今東西様々読んできたが、その都度かなり暗澹たる気持ちになっている。落ち込むとわかっているのに、なんで今この時期に手に取ってしまったのか。

最近のニュースでアイスランドの消滅した氷河後にプレートを作ったとか、アマゾンの森林火災は3週間も続きまだ鎮火せずにいると聞いて本当に泣きたくなる。この1957年の『渚にて』は核戦争で世界が破滅するが、鏡 明氏の巻末解説に書かれているとおり、未来の危機はより複雑化し、地球温暖化や、水、食料問題と問題は山積みで待ったなしだ。1957年の当時以上に事態が悪化しているなんて、オーマイガー。

渚にて』の登場人物達は、人類滅亡まで残り数ヶ月しかない最後の日々に大学へ通いだしたり、美術館に行ったり、キャンプして魚釣りに熱中し、自宅の庭を最高の庭園にしようと励み、仕事もギリギリまでやり遂げて、家族揃って服毒し静かに亡くなってゆく。

まるで希望〜絶望〜安らぎ〜悟りと末期癌患者の心理的変化を読んでいるみたいだった。誰も彼もが悟りの高い境地にいてすごい。果たして人はここまで気高くストイックになれるのかと、なりたいものです。