夜空と陸とのすきま

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タクシー運転手 約束は海を越えて/택시운전사

タクシー運転手 約束は海を越えて [DVD]

ソウルのタクシー運転手キム・マンソプは、高額な運賃を支払う約束をしたドイツ人記者のピーターを乗せて光州へ向かう。そこで2人は軍による暴虐を目撃してしまう。はたしてこの一大スクープをかかえて厳戒態勢の光州から無事に脱出し、世界に真実を発信することができるのかというお話。

1980年5月、韓国の光州市で起こった民主化を求める民衆蜂起の光州事件と実話を元にした映画。私が幼少の頃に、海の向こうのわりと近いところでこんな残酷な市民虐殺が起こっていたとは。韓国軍部は長年この事件を隠遁していて、正確な被害者の数もわからないそうですが、市民を殺した兵士だってずっとPTSDで苦しんだだろうに。

映画の方はとにかく死亡フラグが立ちまくり、登場人物に愛着を持つ度に、自分の夢を語っちゃダメだ〜フラグがっっと思った矢先に殺されるし。無邪気な笑顔と死に顔のギャップが辛い。そして中々決意できず煮え切らないタクシードライバーの主人公でしたが、普通の人はすぐにヒーローになれないもの。そこもリアリティがありました。

エンドロール前に、記者のモデルとなった実在人物ドイツ人ジャーナリストのユルゲン・ヒンツペーターのインタビューがあり、あの時のタクシー運転手を生涯探していたが結局会えずに亡くなったそうです。後でWikipediaで調べてみると、この映画の大ヒット後に運転手の家族が見つかり「実在した運転手は光州事件の4年後にガンで死んでいた」と載っていて、一期一会の切なさに胸が苦しい。

光州事件はブロードバンドのインフラもなく、防犯カメラもない時代。今は記者がスクープ映像を撮らなくても、一般市民がネットにUPできるのに、UPしているのに、シリア内戦の虐殺の映像をみても何もできずにもどかしい。