夜空と陸とのすきま

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月の部屋で会いましょう/レイ・ヴクサヴィッチ

月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)

初めてのSF作家さん翻訳本で、33編もの短編集。ひとつひとつが10ページ未満なのでどんどん読めるかと思いきや、中盤に差し掛かってくると疲れてきたり、やや混乱しました。あまりにも設定が素っ頓狂で。

一番手の『僕らが天王星に着くころ』。足下から体の皮膚がゆっくりと宇宙服になり、頭のてっぺんまで宇宙服に覆われると、宇宙に飛んでいってしまうという奇病にかかる人々。設定からして何じゃそりゃ!?と驚愕しつつ、ごく普通の彼氏彼女が「手を離して〜」「まだ行くな!」って最後の別れをしている頃には、感情移入して目元うるうるという。体が宇宙服になるなんてバカバカしいのに、みごとにやられた感じです。

『ふり』、『ささやき』のように、最後の一行で怖っ!とぞっとしたらバタンとドアを閉じられてしまい、後は想像におまかせ(もう怖い想像しかできない)となるような、ホラーな短編もあり、読むのもいやになってくるぐらい描写がやたらグロいのもあり。本当に多彩な短編集でした。

宇宙とは、独学の科学者でも物事を解き明かせる場所、謎の解決が可能な場所、すべてを知ることのできる場所、論理が支配する場所。

発想が常に逆転してるのね。