夜空と陸とのすきま

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図書館島/ソフィア・サマター

図書館島 (海外文学セレクション)

文字と文学を持たない島の青年が、大海を渡り大陸に行き、文字と文学に出会い衝撃を受けていたら、船内で出会っていた少女の霊に取り憑かれ、宗教戦争にも巻き込まれるお話。剣も魔法も出てこないけれど、文字が魔法というのが素敵。情緒あふれる表現が多くて、吟遊詩人の話を読んでいるようでした。そういう意味ではアラビアンナイトに似ているのかな。

最初に表紙絵を見てイメージしたのが、島がまるごと図書館なので羨ましくてそそられたのですが、本文に「図書館島」という名の島は出てこなくて、主人公は島の神殿に幽閉されたけれどすぐに助け出され、導かれるままあれよこれよとオロンドリア大陸を旅してゆく。裏表紙を見たら、原題は「A Stranger in Olondria」であって、「Library Island」じゃないやんー。一体なんだったんだ図書館島というタイトル詐欺ではあります。

でもまあ、その世界の言語と神話、宗教と地名まで細かく設定を作り上げていると、ファンタジーはとても奥深くなりますね。巻末に名詞索引が付いていても全然足りないくらいでした。同じオロンドリアの世界で続編もあるようなので、長いシリーズになるのかな。

「ヴァロンって何だかわかったわ」と彼女は言った。「ジュートよ」

この世界の言葉に読み慣れていき、この会話の名詞の意味がわかると「おおっ!」とくる一節。書物に対する思い入れが熱いお話しでした。