映画は字幕派なので、何度か見かけた字幕さんの名前だなと、このエッセイを手に取りました。本書は3部構成になっていて、まずその一が「字幕屋の気になる日本語」新聞コラムの連載分です。
私的な話を挟みますが、つい最近子供と一緒に山歩きと古い銀鉱跡を探検してきまして、そのダンジョンみたいな様子に興奮して「ヤバイヤバイ!すごくない⁈」と連呼してしまい、後からあれはボキャ貧すぎて子供の前で恥ずかしいなと自己嫌悪に落ち入りました。
なので、太田さんの「ここが変だよ日本語」の数々のご指摘ごもっとも。私も「〜すぎる」「世界観」「させられる」も無意識のうちに多様しています。
いちいち注意や指導をしなくても、言葉の能力は親の背中を見て(聞いて?)いつの間にか養われるもの。ふだんの会話が教科書なのです。
グサグサとトドメを刺されましたが、太田さんのユーモアある文章に救われました。
その二は「字幕屋は銀幕の裏側でクダを巻く」
太田さんが字幕を担当した映画の紹介と字幕作業のウラ話など。私がちょうど育児で一番しんどかった時期に上映された映画ばかりで、ほぼ知らない映画でした。タイトルをメモしてレンタルで見てみます。某公共放送で漢字の「俺・奴」は使えないから字幕を作り直すとか、1秒四文字と決まっているので意訳にならざるを得ないとかウラ話楽しい〜。
その三は「字幕屋・酔眼亭の置き手紙」として映画字幕の作り方を紹介。
最後は吹き替え人気のため字幕の報酬の価格崩壊がおきていて、次世代の職人が育っていけない現状を憂いています。映画配給会社もブラック企業?
ドストエフスキー研究者を目指しながらも字幕屋になり、作品を知るために必ず原作も読み、新しい世界を知れる喜びを持ちつつ資料を読み込む、太田さんは素晴らしい字幕屋さんだなと感服したのに、解説で太田さんが今年の初めに病気でお亡くなりになっていたことを知りました。まだまだ業界を引っ張っていって欲しかったのに残念です。ご冥福をお祈りします。