新☆ハヤカワ・SF・シリーズでは4冊目のケン・リュウ短編集。昨今、対立が生じている出来事や社会問題を、ニュートラルな立ち位置でエンタメを含んだSFに仕立ててしまうその手腕に唸るばかり。世界は感情で動きすぎるんだなと、読後はやや陰鬱な気分になりました。
■宇宙の春
膨張と収縮を繰り返す宇宙のサイクルを四季に例える表題作。YouTubeで公開中の「世界SF作家会議」で、宇宙に連れて行くなら犬と猫どっち?と聞かれ「亀」と答えたケン・リュウ。長ーい壮大な考えができるヒト。
■マクスウェルの悪魔
米国の日系移民の女性がスパイとして日本へ送られ沖縄戦へ。沖縄のユタ、マブイを絡めてくるなんて!最後は涙、涙。霊を使ってエネルギーを生み出し兵器を動かす話もぶっ飛んでいるが、その「マクスウェルの悪魔」をwikiで調べてみるも全く理解できない。
■思いと祈り
銃乱射事件に巻き込まれ死亡した女子高校生の家族が、ネットで叩かれマスコミに遊ばれと泥沼化していく話。これは辛い。コロナ禍で感染者なのに叩かれる現状とも似ている。
■充実した時間
家事子育ても大変だけど、大変だからこそ充実した時間。その全てをロボットにお任せしたら意味がないのは分かる。最後の著者付記がユーモアがあって良き。
■灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹
■メッセージ
死滅した異星人が厳重に封印したものとは?考古学者の父と娘の和解物語。親子のどつきあいは面白かったけど、宝物ハンターとしてこんなの発掘したくないな。
■歴史を終わらせた男-ドキュメンタリー