夜空と陸とのすきま

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ハローサマー、グッドバイ/マイクル・コーニイ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

地球ではないどこかの惑星、夏休みを港町の別荘で過ごしにきた政府高官の息子ドローヴは、宿屋の娘ブラウンアイズと再会を果たす。身分違いの恋とひと夏のジョブナイル。

さわやかな表紙絵と思春期の少年少女達の海の冒険、初恋の行方などなど恋愛小説部分を300ページまでちんたら読み、別に地球外惑星の設定でなくてもよくない?でも狂った伯母のエピソードと、途中で行方不明になっていく登場人物達が妙に気にかかるなと思いきや、じわじわ忍び寄ってくる戦争の足音、ラスト50ページで急にSF設定(惑星)が活かされ、こんな救いようのないオチ!と絶望して、最初の章を読み返してみると伏線に気がつき、おいおい違うぞ希望で終わるオチだぞこれはと理解する。これが大どんでん返しでSF史上屈指の青春恋愛小説と絶讃される所以かと納得です。

政府高官の息子主人公君が親の権威に保護されているのに反抗期で生意気で、純粋そうなヒロインも実は小悪魔的で計算高く、サブヒロインは美少女からびっくりするぐらい落ちぶれていったりします。とにかく登場人物が皆難ありなんだけど、それが印象深く感じてしまう不思議な小説。

政府をはじめ上級階級の人々が、一般市民を捨て置いてせっせと保身に走るのはよくあるけど、さらに上級階級の中でも裏切り締め出しをはじめるので、はてしなくクズで人の心は怖いなぁと感じました(人じゃなくて異星人だけど)。

続編があるようなので、速攻でポチりました。