夜空と陸とのすきま

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ドゥームズデイ・ブック上下/コニー・ウィリス

ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)

 11月は仕事集中の多忙月だったので、宇宙専門用語が出まくったり哲学的でなく、リラックスして読める本、会話文でスラスラ進むSF小説といえばコニー・ウィリスしかないじゃない!とウィリスの長編2作目となる上下巻の文庫『ドゥームズデイ・ブック』に手を出したら、心がえらいことになりました。たまたま町にクリスマスソングが流れ出すこの時期に読んだのも何かの因縁。ジングルベル、教会のベル(この辺に教会ないので、TVとかで)を聞くだけで思い出し泣き必須。

過去への時間旅行が発明され、オックスフォード大学史学部の女学生ギヴリンは、実習の一環として中世14世紀に一人旅立つが、到着と同時にインフルエンザを発症して倒れてしまう。果たして無事に未来に帰還できるのか…というお話。

医療設備が何もない中世で倒れて瀕死のギヴリンと、インフルエンザのパンデミックが起こる現在のオックスフォード大学の様子が交互に進む上巻。あんまり話が進まないけど、変なキャラ達のドタバタに流されながら読めます。

そしてある貴族と優しい神父に助けられ病も癒え、貴族の子供達のお世話をする役目を与えられたギヴリンが、愛らしい子供とふれ合い始める下巻。幸せもつかの間、クリスマスを過ぎた頃にペストが村を襲います。ヨーロッパの半分の人口を死に追いやったペスト。次々に倒れていく村人。ペストの予防接種をしていたギヴリンは一生懸命看病するが…。いやもうこの辺りからページをめくるのが止まらなくなります。重要なことほどさらっと書いちゃうウィリスの腕前が見事です。ギャグとシリアスの対比が素晴らしい。

ラノベとコミック業界に蔓延る異世界転生ブームに飽きたら、ぜひこのガチ中世タイムスリップを読んでほしいな。寒いし、汚いし、みんな歯槽膿漏だしで強烈です。ホント中世には絶対に行きたくないけど、人類にとってこんな大変な時代だったんだと思いをはせる。

ギヴリンは過去で宮澤賢治の詩『雨ニモマケズ』の「南ニ死ニサウナ人アレバ行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ」をすることになってしまいましたが、死に向かう人に精一杯尽くす姿はまさに天使でした。

 

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