夜空と陸とのすきま

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紙の民/サルバドール・プラセンシア

紙の民

訳者がアンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を翻訳した藤井 光さんで、さらにSFっぽい表紙で、帯には柴田元幸氏が大絶賛してはるコメントが!これは名作だろうと手に取りました。実際には迷作でした。

「あなたの寝ションベンにはもう耐えられない!」と突然妻が出て行ってしまい、傷心のフェデリコ・デ・ラ・フェは、娘と二人で国境を越えてロサンゼルス郊外で労働者として新たな生活を始めたが、天空にいる土星から自分達を盗み見されている気がして、ギャングと共に土星に戦争を仕掛けるという奇想天外なお話。

中盤で土星=作者とわかり、メタでメタメタな構成に感心して、作者の大失恋話にゴールデンボンバーの『女々しくて』が脳内でリピート!

さらに三段の段組、縦横の文字方向の入り乱れと、DTPソフトの限界に挑戦したかのような自由なレイアウトで、とにかくはちゃめちゃ。よくキャラが勝手に動き出すといいますが、暴れて作者を余白に押しやったり、文字を隠したり、最後には自分達がページから出て行ったり。だから「紙の民」なんですね。

比喩表現が多くて、詩を読んでいる感じでした。ストーリーはあるようでないような。ライムを刺したコロナビールを飲みながら読もう!