夜空と陸とのすきま

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郝景芳短篇集/郝景芳

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

気が付いたら、一月近くも更新が途絶えている…。さて大型すぎた10連休、皆様はいかがお過ごしでしたか?もう疲れたよね〜。雪国の長い春休みがやっと終わったらと思ったら、健康診断、家庭訪問、授業参観後の10連休。1学期の授業の遅れはどうなっちゃうんだろう…。うちの子達もぽわーっとした顔で登校していきました。ホントに生活リズム狂うわ。そして私は毎度の家事疲れです。

家族全員が家にいるとなると、本を読みまくっていた割にはブログが書けなかった。この「郝景芳短篇集」も図書館で借りたので、もう返却してしまい手もとにない。

ケン・リュウ編の早川版『折りたたみ北京』とは翻訳家を変えて収録されている『折りたたみ北京』もまた良い。著者近影でみると郝景芳氏が美女だったのでびっくり。こんなに若くて美人で素晴らしい学歴&経歴のエリートがっっSF作家!?って感じ。でも全7篇の短編すべてに、彼女が悩んできた”いばらの道”が反映されていて、とても納得です。

詩的な表現の優しい文章のわりには、設定舞台は大掛かりに動き、ばっきんばっきんと折りたたまれてゆく首都北京のアイデア(『折りたたみ北京』)も壮大だし、月にいる侵略者に対して、共振を起こして弦に見立てた宇宙エレベーターを震動させ、音楽によって爆破するアイデア(『弦の調べ』)も壮大。力業すぎる。

一番印象に残ったのは、『山奥の療養院』。ようやく研究者から大学講師になれたのに、嫁は高級なベビー用品を要求し、義父はマイホームを買えとプレッシャーをかけてくるストレスフルな男性の叫び。この一体自分は何をしたかったんだ!?とわからなくなる感覚、ほんとそう。

おれもわかならい。人はもともと自由なもので、何だってしたいことができる。でも子供が生まれた途端、たちまち変わってしまう。子育てのために金が必要だし家も必要だ、何をしたくても自由にはならない。どうしてわざわざ自分を苦しめなきゃならないだろう?

俺たちがやってきた勉強はなんだったんだ。宇宙の中では知識にどんな意味があるんだ?

 『折りたたみ北京』の映画化楽しみです。人が死ぬような犯罪話ではないけれど、退廃的なフィルム・ノワールっぽいといいな。