夜空と陸とのすきま

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クロストーク/コニー・ウィリス

クロストーク (新・ハヤカワ・SF・シリーズ)

脳外科手術EEDを受けると、パートナーの気持ちがダイレクトに伝え合うことができるようになる!この最新のEED処置を一緒に受けて、より親密な関係になろうと恋人に誘われたブリディ。ところが手術を受けたらテレパシーが使えるようになっちゃったという、超能力ラブコメSFサスペンス。

早川書房の銀背(新書サイズ)で700ページ、再来年あたりに文庫化するとしたら超分厚い上下巻になるであろうコニー・ウィリスの新刊を早速読んでみました。

序盤はEED処置に反対するブリディの親族や、社内恋愛中のブリディの職場関係がわちゃわちゃ。自分の意見を絶対押しとおすアメリカ的TVドラマのような”かしましさ”、マシンガントーク。実際に色んなTVドラマの話も出てくるけど、全然わかんないけれど大丈夫。

中盤でエスパーになっちゃったあたりから、各章の終わりに急展開が現れ、週刊少年ジャンプの“引き”のような、もうページをめくる手が止まらない〜最後の伏線の回収も細かくて(あれ、伏線なのかと驚きながら)大団円で読み終わって満足満足です。

人の心が読める超能力の表現を回線、混線と表し、ネット通信とSNSのコミュニケーションとからめて(主人公達は携帯キャリア勤め)描いていくのが面白いと思いました。iPhoneFacebookTwitterとどんどん実名で出てくるけど、10年後に読み返したらきっと古くさく感じちゃうんだろうな。

心の中の防御壁も面白かった。ブリディは他人の声を”洪水”とイメージし壁を想像して防ごうとします。自分なら何に例えるだろう、ヒッチコックの『鳥』かな?と考えるのもまた楽し。

頭の中は、悪いことが出てこられる唯一の場所だから、考えが不相応に不快なものになりがちだ。でも同時に、人間というのは野蛮で、いけすかなくて、さもしく、下品で、ごまかし上手で、残酷なんだ。

頭の中=”ネット”と変換しても可。