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死に山 世界一不気味な遭難事故≪ディアトロフ峠事件≫の真相/ドニー・アイカー

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

帯と解説が『奇界遺産』の写真家、佐藤健寿さんだーと見事に釣られて手に取る。年越しまであとわずか、2019年初っ端のエントリーに「死」がつくタイトルなんてヤダァと、年賀状作成もぶん投げて読み終えました。頑張った。

 

1959年、ソ連ウラル山脈で起きた大学生登山チームの遭難、9名全員が壮絶な死に方で発見された《ディアトロフ岬事件》。未解決の事件は超常現象的噂を呼び、UFOに遭遇した、雪男に襲われた、見てはいけないものを見たから消されたという陰謀論まで、様々な憶測が飛び交う。50年前の怪事件をアメリカ人ドキュメンタリー映像作家が解明に迫る、というノンフィクション。

 

トレッカー達の行程と、事件後の捜索隊の行程、そしてロシアに渡って現地に向かう著者の三つの視座から行方を追っていく。貴重な写真も合わせて掲載されていて、大学生達の楽しそうな登山の様子と、3ヶ月にも渡る雪山での捜索隊が対照的で緊張感が増します。

途中で持病悪化のためリタイアしたことで、唯一の生存者となった人物も、当時の事件担当者も陰謀説を信じていて、冷戦下のソ連の恐怖心もひしひしと。

最後に著者は真相を解明していますが、登山で《山怪》にあうのは、こうして人の脳内で作られるものなのかも。

ネットで憶測に振り回されず、足を使って現場に行けば真実は見えてくる。お見事でした!