夜空と陸とのすきま

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黄色い雨/フリオ・リャマサーレス

黄色い雨 (河出文庫)

情熱の国、大らかなラテン気質スペインというイメージが覆された、繊細で寒くて苦しくて暗い死の小説。黄色=ほっこりとする幸せな色だったのに、冷たい黄色もあるんだなと思いました。

時間はいつもさまざまな傷を消し去る。時間は執拗に降りつづく黄色い雨であり、それが燃えさかる火を少しずつ消し去っていく。

 スペインの山奥の廃村が舞台。限界集落から村人は少しずつ去っていき、孤独に耐えきれず妻は自殺、老いた雌犬と共に孤独に死を待つ男の話。

以前読んだ閻連科の「年月日」も廃村で死を待つ盲いた犬と老人の話でしたが、あのお話はトウモロコシを狙うネズミとのサバイバルがありました。一方「黄色い雨」は、ひたすら死に向かう孤独感を表現していて、救いが全くなくてせつないが、文章は詩的で美しい。この無常がいつの日か自分にも訪れるのか、しみじみとメメント・モリ。しかも大寒波来襲時に読んでしまった。大雪の日に読むとかなりシンクロしますね…。