夜空と陸とのすきま

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解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯/ウェンディ・ムーア

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 (河出文庫)

コミックス「決してマネをしないでください」(蛇蔵/講談社)に登場したジョン・ハンターが強烈すぎて、もっと読みたくなり書店で購入。

18世紀イギリス・ロンドンの外科医であり、奇人鬼才博物学者ジョン・ハンターの生涯を描く。天才的な解剖の腕を持ち、稼いだお金はすべて標本作りにつぎ込み、古今東西の珍しい動物を集め飼育し(ドリトル先生のモデルになる)、夜な夜な墓地で死体泥棒を繰り返しては解剖し(ジキル博士とハイド氏のモデルになる)、医師会からは鼻つまみ者にされながらも多数の弟子を育て上げ、ダーウィンより70年も前に進化論にたどりつき、のちに「近代外科医学の父」と呼ばれるようになる。とにかくエピソードにことかかない人物で、どの逸話も面白く一気に読めました。

馬○と天才は紙一重というか、影響力が強すぎるので巻き込まれる弟子、家族も大変だなとも思ったり。ジョンの死後にうってかわって、未発表の論文を盗作し、燃やすという復讐にはしる義弟も、良心の呵責に耐えきれずアル中死と壮絶。

観察して推論して必ず実験して確かめる

若いころから書物にたいして不信感をもっていたおかげで、ハンターは生涯、古典的な考えや根拠なく信じられていることをまず疑ってかかることができた。彼はいつも、他人の書いたものよりも自分の目で見たものを信じた。ラナークシャーの野山を駆けまわっていた子どものころから、自分の感じた疑問を忍耐強い観察と実験で解き明かそうとつとめた。

ハンターの真の敵は迷信と偏見。「現代のジョン・ハンターたちを、ぼくたちの社会は正しく評価し、応援できるだろうか」と問う、山形浩生氏の解説が胸に響きました。そうありたいものです。