夜空と陸とのすきま

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シェル・コレクター/アンソニー・ドーア

シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)

 

アンソニー・ドーアの処女短篇集。確かに文体のリズム感や、その場にいるような感覚におちいる情景描写は最新作「すべての見えない光」のほうが優っていますが(当たり前)、この短篇集を20代の若さで!という、繊細な物語を綴る力に恐れ入りました。傷ついた心をゆっくりと自然の中で回復していくような話ばかりで、温かい気持ちになれました。ムーアの物語には、「窓辺に貝殻を並べる」シーンって、結構出てきますね。あと釣りも。いいね、魚釣り。

 

「ハンターの妻」「ムコンド」
どちらも真逆な仕事をする夫婦の話。すれ違いが続き、逃げ出してしまう妻が読んでいて苦しかったけれど、のちに距離をおくからこそお互いの愛に気がつく。

 

「世話係」
アフリカの内戦からアメリカに逃れてきた黒人が、浜に打ち上げられて死んだ鯨の心臓を埋めたり、森に菜園を作ったりすることで救われる物語。最初の内戦の描写が激しかったこともあるけれど、これが一番心に響きました。

 

シェル・コレクター」表題作は、アフリカの孤島で貝を拾い集める盲目の老貝類学者のお話。世捨て人が、あるきっかけで世界中の注目を浴びる羽目に。

この舞台が沖縄の孤島になり、老貝類学者がリリー・フランキーという日本映画が昨年公開してたなんて知らなかったよ。沖縄であんなに砂浜近くに住んでいたら台風で流されるのでは?っていうか奇病?貝と女の組合せはエロい。うーん、アート系な感じにいきすぎてしまったような気がします。

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