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本棚の隣で針仕事

雪国在住。積ん読本と図書館通い、 録画した映画、買いためた布や手芸用品をどうするかの記録。

ドクター・ブラッド・マネー博士の血の償い/フィリップ・K・ディック

ドクター・ブラッドマネー―博士の血の贖い― (創元SF文庫)

 

1981年、火星に向けてデンジャーフィールド夫婦がロケットで飛び立った日、地球では世界核戦争が勃発した。衝撃でロケットは地球を回る衛星と化し、デンジャーフィールドの宇宙からのラジオ放送だけが、荒廃した地球の生き残りの人びとの癒やしとなる、というお話。

ロケット発射後、大気圏を抜けて青い地球が視界に入り出した直後に核戦争が始まり、キノコ雲が次々に現れるという絵図ってすごいですね。まるで「博士の異常な愛情」のラストシーンのよう(本作のタイトルも博士ブームにのった結果らしい)。火星への移住目的でロケットが打ち上げられたと同時に、残された人類が滅亡しかけるという…。

その後は、核戦争後の生き延びた人びとの地球での日常がお話の中心となります。精神病を病んでいる物理学者、超能力者の肢体不自由者、お腹の中に双子の弟がいる少女、奇形ネズミなどミュータントやフリークスが出てきます。死者と話ができるという、このお腹の中の弟君の設定もなかなかホラー。初っぱなが絶望で、あとは人びとがどう生き延びてゆくのかという群集劇。サスペンス色も少しはあったけど、ディックにしてはゆっくりした展開でした。一人宇宙に取り残されたデンジャーフィールドがラジオで話すトークと流す音楽はとてもせつない。いとうせいこうの「想像ラジオ」もせつなかったが、ラジオってノスタルジックでいいモチーフだな。

 

話がそれますが、核戦争後の話というと「AKIRA」よりも先に衝撃を受けたのが、私が小学生の頃に少年ジャンプで連載されていた「飛ぶ教室」。2巻完結と短い漫画でしたが、小学校の校庭に核シェルターがあって、核攻撃から偶然助かった小学生達のサバイバルのお話です。ガイガーカウンターも、シェルターも死の灰もこの漫画で知りました。コミックスも持っていたはずなんだけど、実家で行方不明。Amazonでの評価も未だに高いですね、やっぱり同じ思いの人がいて嬉しい。復刊してくれたけど高いっ。

「ドクター・ブラッド・マネー」は最後に希望のあるハッピーエンドでしたが、読み終えた直後に、かの国の地下核実験のニュースが飛び込んできて、気分はバッドエンド。