夜空と陸とのすきま

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虚空の眼/フィリップ・K・ディック

 

 

宇宙の眼 ハヤカワ文庫SF

宇宙の眼 ハヤカワ文庫SF

 

 1991年初版の創元推理文庫版を古本で購入して読む。
創元推理文庫版は絶版なので、今入手できるのはハヤカワ文庫版の新訳「宇宙の眼」。こちらの方とも読み比べてみたいですね、新訳の方が文章に勢いがありそう。

ある研究所の巨大な陽子ビーム偏向装置が突如暴走事故を起こし、見学者の八人の男女がまきぞえとなる。巻き込まれたうちの一人、主人公ジャック・ハミルトンは、ほどなく病院で意識を取り戻すが、身体には何の異状もなかった。だが、そこは彼が知っている現実世界とは違った、奇怪な宗教に支配される世界だったのだ。八人はもとの世界に帰る方法を探り始めるが…。というお話。

この八人のうちの最初に意識を取り戻した人の精神世界に、他の人物は取り込まれていき、宗教絶対世界、気に入らないものは排除していく世界、破壊的世界、共産主義者が闘争する世界と多次元宇宙を移りゆく。

ドタバタの群衆劇ですが、コミカルで面白かったです。最初の宗教絶対世界で、傘につかまってぐんぐん上昇していくと地球の周りを小さい太陽が公転し、神の眼に近づくシーンも印象的でしたし、次の気に入らないものがどんどん消えていく世界で、魚、金属、草原、自然、はては空気までがポポポポーンって消えるのも笑えました。漫画でもなく、実写でもなく、演劇の舞台として見てみたいかな。

それにしても偏向支配者が絶対君臨する世界ほど怖いものはないですね。この作品が書かれた1957年は冷戦下でそんな恐怖が濃厚だった時代かもしれませんが、今も不穏な雰囲気がじわじわきていて不気味です。

 

話は変わって、先週の金曜日夜にNHKEテレでやっていた「ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅱ 第2回SFは何を夢見るか」をとても興味深くみました。私は大阪万博よりもつくば万博世代なので、大阪万博をよく知らなかったのですが、こんなにも日本重鎮のSF作家が全力投球していたとは思いませんでした。面白かった!

www.nhk.or.jp


番組内にて大森望氏が提示したSF年表で、1945〜1970年までがSFの創生期(脳天気なハッピーエンド)そして青春期であり、この頃までに今のSFの元ネタは出尽くしている。そして1970〜1995年が成熟期(終末論大流行)、2015年の今は第2の青春期とのこと。00年代は第2のSF黄金期!だから私が10代後半にはまったSFに再び回帰したのも、自然の流れだわと(笑)勝手にこじつけして勝手に納得したのであります。そして大森望氏の着ていた服がインパクトありすぎで、かなり動揺しました。時計シャツという狙っているんだか天然なんだか(^^;;