夜空と陸とのすきま

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象られた力/飛 浩隆

 

象られた力

象られた力

 

 同作者の『グラン・ヴァカンス』を探していたのですが、先にこちらの短編集に出会いました。飛浩隆…発表作は少ないけれど、すごい腕前!まるでテッド・チャンみたい。すいません、飛氏を今まで知らなかったことを後悔してしまいました。

四つの短編、まずは下半身が繋がった天才的双子のピアニストの話『デュオ』でいきなり物語に引きずり込まれました。圧巻のラストリサイタルの後にくるどんでん返し、バランスがいいというか、見せ方が上手い!音の表現もさることながら、味覚、聴覚、嗅覚の表現が豊富でうなりました。

『呪界のほとり』記憶をなくした男と小竜の元に現れた謎のじじい。「フォッフォッフォ」刺客が迫る!爆発脱出!みたいな、これから物語が始まるのにいきなり終了。ぜひ続きが読みたい。

地球化された某惑星で泥から生まれる少女を見ようする男たちを描いた『夜と泥の』。綺麗な表現にうっとり、でも蟹を食べる会食シーンが好き。蟹食べたい。

そして図形の力に世界が飲み込まれていく表題作「象られた力」。節ごとに複数の登場人物の視点から語られるので、今は誰の視点?と混乱しつつ、あまりにも激しい描写に想像力がついていけず、どなたかこのすごい世界観をぜひ映像化してください。私の娘と登場人物の名前が同じで、ちょっと冷静に読めませんでした笑