古本屋で購入。
伊藤計劃氏が1998〜2000年に自身のサイトで連載していた映画時評集。
解説は柳下毅一郎氏
まだ作家デビューする前のもので、かなりフリーダムな文章ですが、目線がとても面白かったです。映画愛に溢れていて、ちゃんと映画館に何度も足を運んで、音楽もカメラも照明も細部まできちんと見ている。そして、各レビュー文の冒頭に1~2ページ分、映画のあらすじを書いているんですが、これがまた上手い!まるで小説のように描くのです。
20代半ばでここまで詳しく正当に映画を語れるなら、「CUT」か「映画秘宝」あたりに連載もってても良かったんじゃなかろうか。「ゴジラ2000 ミレニアム」の評はすごく辛口で爆笑しました。
伊藤計劃氏の作品は世界観やガジェットは好きだったけど、システムの破綻というラストは悲しすぎて…でしたが、この映画時評集は共感できるところが多かったです。とくにひたすら映画のディティールと世界観にこだわるあたり、いいなぁ。
以下「人狼」のレビューの一文を引用。一番好きな文章です。
世界は美しい。コンクリートの汚れのパターンも、廃屋を覆う蔦も、テーブルの木目のパターンも。川面が反射する光のパターン、通り過ぎる女性の髪が風にたなびくモーション、僕らの世界は美しさに満ちている。その美しさの集合体として世界があり、空気があり、光がある。そのような美しく醜い世界。