古書店で購入。
北村薫というとミステリーですが、こちらは心温まる親子の日常。
さきちゃんが自分の娘と同い年、どれどれと手に取ってみたのです。
表題になっている「月の沙漠をさーばさばとーさばの味噌煮がゆきーましたー」と、歌いながら夕飯を作るお母さん。
もうさば味噌を作るときはこの歌がリフレインするに違いないと、心底震え上がりました。
9歳だと本も自分で読めるし会話も達者になってくるし、ものすごく細かく物事を観察しているけれど、まだ大人ほど上手く表現できない頃の少女が違和感なく描かれているので、こういう日常あるあると思いつつ、そう返すか上手いなお母さんと感心し、語り手のつっこみも面白くさくさく読めました。
巻末の梨木香歩氏の解説が驚くほど深読みしていて、なんとなく感じた切なさは母子家庭にある淡い影だからとか、あれはそんなにエロスなのかと目からウロコ。とても良い解説です。
さらに幸福とはこういうありふれた日常のことだと指摘されていて納得。
子育てしていると、自分が幼少だった頃を思い出さずにはいられません。そして自分が親からしてもらって嬉しかったことは、自分の子どもに無意識にしてしまう。日常の至福は受け継がれていくんだなぁ。