夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

時は乱れて/フィリップ・K・ディック

 

時は乱れて

時は乱れて

 

 本屋で購入。

私の本棚には、フィリップ・K・ディックコーナーがありまして、数年前から古本屋でPKDの本を見かけたら即買いしつつ、コツコツ集めていたのですが、最近はハヤカワが新訳版で続々と復刊してくれて、嬉しいやら読むなら新訳の方が読みやすいよな〜と悔しいやら複雑な心境です。古書なのでハヤカワ、創元、ちくま、新潮、サンリオと乱れて集めてまして、特に短編集は出版される度に中身が違うので、もう何が何やら。

さてこの「時は乱れて」は30年前にサンリオ文庫で出版され、その後サンリオ文庫廃刊で幻の初期作品となっていたのが、この度ハヤカワで新訳復刊。めでたい。

1950年代と予測される時代の、普通の町に暮らす主人公レイグルは、新聞の懸賞パズルでなぜか3年間も勝ち続けていて、懸賞金で生活をして弟一家と暮らしている。ひたすらパズルを解く日々に違和感を感じ始めたレイグルは、あるとき甥っ子が廃墟から拾ってきた雑誌から現実世界に疑念を抱き始める。徐々に崩れていく現実、そしてその先に待っていた真実とは。というお話。

ディックおなじみの模造世界、虚言、今の生活は実は誰かに操られているのでは…というテーマ。この世界が崩れていく過程が長く丁寧に描かれていて、鉄板とわかっていてもゾクゾクきました。初期作品は後期のラリった難解な作品より断然読みやすい〜。

ストーリー途中からガンダムのジオンvs連邦軍宇宙世紀0050年代の頃)のようなSFになっていき、二つの勢力に挟まれて最終的に主人公が選択した道は、かなり序盤の方に出ていた主人公の独白に。

これぞ生き残りの法則だよ。新しい刺激を受け入れるのを拒否する者は、その見返りを受ける。適応か、さもなくば破滅か…いつに変わらぬ永遠のルールだ。

 

 ディックがこの作品で言いたかったことはこの独白部分で、保守的な殻にこもらず、常に前を向いて歩いていけという事なのかな。