夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

読書【小説】

怒りの葡萄/ジョン・スタインベック

怒りの葡萄(上) (新潮文庫) 作者:ジョン スタインベック 新潮社 Amazon 怒りの葡萄(下) (新潮文庫) 作者:ジョン スタインベック 新潮社 Amazon 新潮文庫の『怒りの葡萄』を大久保康雄訳で読む。上記のamazonリンクは伏見威蕃 翻訳版です。岩波、早川と他…

シナモンとガンパウダー/イーライ・ブラウン

シナモンとガンパウダー (創元推理文庫) 作者:イーライ・ブラウン 東京創元社 Amazon 海賊冒険×お料理小説。時は19世紀イギリス。海賊船に拉致された貴族お抱えの料理人ウェッジウッド。調理設備最悪、乏しい食材で週に一度、女船長マボットのためだけに極上…

蛇の言葉を話した男/アンドルス・キヴィラフク

蛇の言葉を話した男 作者:アンドルス・キヴィラフク 河出書房新社 Amazon 「これがどんな本かって?トールキン、ベケット、トウェイン、宮崎駿が世界の終わりに一緒に酒を吞みながら、最後の焚き火を囲んで語っている、そんな話さ」「『モヒカン族の最後』と…

ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース柴田元幸翻訳叢書

ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース(柴田元幸翻訳叢書) (Switch library) スイッチパブリッシング Amazon 柴田さん訳の「英文学」名作短篇集。イギリスというと、この表紙絵のように灰色で霧がかっている黒のイメージ(逆にアメリカは太陽さんさん…

1984年に生まれて/郝景芳

1984年に生まれて 作者:郝景芳 発売日: 2020/11/24 メディア: Kindle版 『折りたたみ北京』郝景芳の長編。1984年と言えばオーウェルですが(まだ積ん読です…)SF仕立てではないけれど、不思議な仕掛けが含まれた作品でした。 郝景芳短篇集に収録されてい…

銀河の果ての落とし穴/エトガル・ケレット

銀河の果ての落とし穴 作者:エトガル・ケレット 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 タイトルと素敵な表紙の装画から勝手にSFだと思い込んで手に取りましたが全然違った。この不条理な世界をユーモアで笑う、イスラエルの文筆&映像作家のケレットの超短篇…

掃除婦のための手引き書/ルシア・ベルリン

第10回Twitter文学賞海外部門で1位獲得から気になっていたので手にとってみました、アメリカ人作家ルシア・ベルリンの短編集。表紙写真は著者近影(元夫さんが撮影)、どえらい美人さんです。小説の形はとっていてもほぼ自叙伝なので、場末のバーでタバコと…

渚にて あの日からの<みちのく怪談>/黒木あるじ 他

10人の東北在住作家さんが綴る、あの日からの…東日本大震災の鎮魂怪談集。 実話あり、創作話ありですが、ディティールがやたらと細かくて、話がうますぎる!映画みたいと思うのは創作話で、実話は短くてしんみりとした印象でした。怪談って実際はさりげない…

ボートの三人男/ジェローム・K・ジェローム

楽しいSFを読もう!と思い立ち、コニー・ウィルスの『犬は勘定に入れません』を読み始める前に、神林ちゃん(『バーナード嬢曰く。』)が先に『ボートの三人男』を読むべきだと言ってたので、元ネタとなる19世紀イギリスの傑作ユーモア小説を。古本で買った中…

ウィトゲンシュタインの愛人/デイヴィッド・マークソン

終末世界で人類最後の生き残りとなった女性、ケイトの独白手記。終末SFかと思って読み始めたけれど、内なる宇宙への旅的なお話で実験小説だった。まずケイトとは何者か。息子がいたらしいが亡くなり、夫と別れ、母を看取り、他に生存者がいないか探すため車…

宝島/真藤順丈

1952年から1972年の本土返還まで、激動の戦後沖縄を3人の若者が駆け抜ける!山田風太郎賞、直木賞ダブル受賞作。 米軍基地に忍び込み、物資を略奪して住民に配る義賊「戦果アギャー」。そのリーダーであるオンちゃんは嘉手納基地襲撃中に行方不明になる。オ…

黄金列車/佐藤亜紀

ハンガリー王国のユダヤ資産管理委員会が、ユダヤ人から奪った物品を国有財産とし、迫りくるソ連軍から財産を守るため、列車に乗せて運び出す実話を元にした逃走劇なお話。 主人公はバログは役人で、ユダヤ人から強奪した物と知りつつ(良心は痛みながらも)職…

純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語: ガルシア=マルケス中短篇傑作選/ガブリエル・ガルシア=マルケス

ノーベル文学賞受賞作家、南米コロンビアのガルシア=マルケス中短編傑作集。 代表作『百年の孤独』を読んだのは…15年ぐらい前でレメディオス・バロの表紙絵に惹かれたから。マジックリアリズムとはさもありなんと、読後の疲労感が半端ない思い出が(登場人物…

紙の民/サルバドール・プラセンシア

訳者がアンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を翻訳した藤井 光さんで、さらにSFっぽい表紙で、帯には柴田元幸氏が大絶賛してはるコメントが!これは名作だろうと手に取りました。実際には迷作でした。 「あなたの寝ションベンにはもう耐えられない!…

ヒッキーヒッキーシェイク/津原泰水

引きこもりカウンセラーのJJは、四人の引きこもりを連携させて、あるプロジェクトを立ち上げる。「人間を創る、不気味の谷を越えたいんだ」。こうして始動したアゲハ・プロジェクトは思わぬ展開に…というお話。 まず「不気味の谷」って何やねんとググる。全…

11 eleven / 津原泰水

津原氏と百田尚樹のバトルから、幻冬舎社長による実売数公表騒動に発展するまでの流れはずっとTwitterで追いかけていて、津原氏と早川書房編集部を応援したくて、本屋に走り『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫を買いました。この騒動の中でも津原氏のツイー…

厨師、怪しい鍋と旅をする/勝山海百合

すぐれた料理人(厨師)一族の村、斉家村の斉錬は、山できのこ取りの最中に謎の男から謎の鍋を借り受ける。その鍋は煮炊きをしないでいると、動物や人間を襲う妖怪鍋だった。鍋を持ち主に返してくるまでは勘当だと村を追い出され、斉錬は流浪の厨師となる。…

最後の物たちの国で/ポール・オースター

行方不明になった兄を探しに、ある国へ入国したアンナ。その国は秩序が崩壊し、人々の心は荒み、日々物がなくなっていく極限の状態。アンナは生き延びて脱出できるのか。アンナからのあてもない手紙という形式で、物語が紡がれていくディストピア小説。 雑誌…

こうしてイギリスから熊がいなくなりました/ミック・ジャクソン

「精霊熊」「罪食い熊」「サーカスの熊」「下水熊」など8つの奇妙な熊の物語。 訳者あとがきによると、イギリスにもともといた野生の熊は、食料や毛皮の原材料や娯楽のために乱獲されてしまったため、11世紀にはグレートブリテン島からは絶滅してしまったら…

ビリー・リンの永遠の一日/ベン・ファウンテン

19歳のビリーが属するブラボー分隊がイラクの戦闘でたまたま全米テレビ中継され、その功績から全米のヒーローになってしまう。一時帰還をはたし勝利の凱旋ツアー、二日後にイラクに戻るその日の数時間をビリーの視点で濃密に描くというお話。 クライマックス…

黄色い雨/フリオ・リャマサーレス

情熱の国、大らかなラテン気質スペインというイメージが覆された、繊細で寒くて苦しくて暗い死の小説。黄色=ほっこりとする幸せな色だったのに、冷たい黄色もあるんだなと思いました。 時間はいつもさまざまな傷を消し去る。時間は執拗に降りつづく黄色い雨…

図書館島/ソフィア・サマター

文字と文学を持たない島の青年が、大海を渡り大陸に行き、文字と文学に出会い衝撃を受けていたら、船内で出会っていた少女の霊に取り憑かれ、宗教戦争にも巻き込まれるお話。剣も魔法も出てこないけれど、文字が魔法というのが素敵。情緒あふれる表現が多く…

羆嵐/吉村 昭

大正12年の冬、北海道の開拓村をヒグマが襲った三毛別羆事件を題材にした小説。 いや〜私は娘を普通分娩で産んで、すぐに母乳が出たときに「人間って哺乳類なんだな」と実感したのですが、この本を読んで最初に思ったのは「人間ってエサなんだな」です。 文…

カブールの園/宮内悠介

芥川賞候補作にして、三島由紀夫賞受賞作。久しぶりにSFから離れて純文学たるものを手にしてみましたが、宮内氏はSF畑出身らしく「VR治療」、作曲の出来るYouTube「トラック・クラウド」など近未来っぽいものも出てきました。いいぞ〜!そしてヨセミテ国立公…

スウィングしなけりゃ意味がない/佐藤亜紀

最近は海外文学ばかり読んでいて、久々に手を取った佐藤亜紀の新作も大戦下のドイツが舞台という、ちっとも日本じゃない。 第二次世界大戦中ドイツ・ハンブルクのナチスなスウィングボーイズのお話。主人公達がおぼっちゃまなボンボンで、始終斜め上な目線で…

シェル・コレクター/アンソニー・ドーア

アンソニー・ドーアの処女短篇集。確かに文体のリズム感や、その場にいるような感覚におちいる情景描写は最新作「すべての見えない光」のほうが優っていますが(当たり前)、この短篇集を20代の若さで!という、繊細な物語を綴る力に恐れ入りました。傷つい…

メアリと巨人/フィリップ・K・ディック

ディック初期の<普通>小説。そう、これには他惑星に移住とか、タイムマシーンとか、偽世界なんてモチーフは出てこないんです。二十歳の女の子とレコード屋のおっちゃんの恋の物語! ディックの小説で女の子が主人公ってのも珍しいし、大体が会話文で進んで…

メモリー・ウォール/アンソニー・ドーア

アンソニー・ドーアの「すべての見えない光」を読み終えて、その前に出版された短篇集「メモリー・ウォール」を借りてきました。短いけれど厚い6つの物語。自然の中が舞台で、におい、光、植物や虫と鳥の描写なども入れてくるのでその場にいるかのような錯覚…

すべての見えない光/アンソニー・ドーア

第二次世界大戦時のフランス、サン・マロを舞台に、ドイツの少年兵とフランスの盲目の少女との出会いを描く物語。 時間に拘束される長いお仕事が終わったので、こうして本腰を入れて読書ができる歓びをかみしめています。この本はTwitterで話題になっていて…

黒豚姫の神隠し/カミツキレイニー

沖縄+ジャケ買い。 沖縄の離島に住む映画好きの中学生ヨナは、東京からの転校生・波多野清子が歌う姿に一目惚れして、ぜひ映画を撮りたいと思い立つが、偶然、波多野の後ろに怪しい黒い影を見てしまう。「私は黒い豚に呪われている」ー美少女の深まる謎とは…