夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

時間線をのぼろう/ロバート・シルヴァーバーグ

時間線をのぼろう【新訳版】 (創元SF文庫)

ベンチリイ装置の開発により、過去への時間旅行が可能となった未来。時間局の新米時間観光ガイドのジャドは、今日も観光客と共に過去のビザンティウムへ旅に出る。ある日過去の旅で出会って恋した絶世の美女はジャドの大大大大大……おばあさんだった!というお話。

タイム・パトロールが出てくるのですが、「劇場版ドラえもん」で育った世代にはおなじみの組織。この『時間線をのぼろう』は1969年出版なので、藤子不二雄氏は影響を受けたのかしら。

時間旅行でアクシデントが起き、修正しようと躍起になるとタイムパラドックスがどんどん出現、収拾がつかなくなっていく最後の加速は読み応えありました。
全ては発情期の動物みたいな若き主人公の奔放さ、ドラッグによる情緒不安定などなどが原因では?と、あまりにも倫理観の欠如にびっくりですが、まあ性の解放・ドラッグ解放というヒッピー全盛期の影響もあるのかも。この大大大大大……おばあさんであるご先祖様もエロ過ぎる。

西洋と東洋の中間地にあり、ペルシア、マケドニア匈奴、ローマ、オスマンとあらゆる国家民族が支配を繰り返し、コンスタンティノープルやイスタンプールと名を変えてきた不滅の都市が舞台であって、歴史ロマン満載。西洋史のよき復習になりました。(かなり混乱した…)

 

 

ヨシダ、裸でアフリカをゆく/ヨシダ ナギ

ヨシダ,裸でアフリカをゆく

書店や古書店で「クレイジージャーニー」の出演者本を見かけては、ついつい買ってしまい、気が付けば結構な積ん読量。今月は積ん読消化強化月間として、しばしこの流れ続きます。

大人気の少数部族を撮る写真家ヨシダナギさんのブログ本。ブログだけあって、とってもゆるい感じで読みやすいです。英語もできないのに若さだけを頼りにアフリカに飛び込んでいった、危なっかしいエチオピアの旅に始まり、訪問を重ねることでアフリカに慣れ親しみ、写真家としての作家性を築きあげていった様子がよくわかりました。

さらにホテルの部屋いっぱいに”G"の大群とか、トイレいっぱいにウ○コとか、数々のエピソードを読んでいると、よく感染症にならなかったなぁと。

でも伝えたいのはアフリカ=危ないではなくて、アフリカの魅力。彼女の写真からは、常に被写体への強いリスペクトが感じられて、それが一番の魅力だと思います。

少数民族の人口も年々減ってきてしまっている。きっとこのままいけば何十年後、もしくは数年後には、私が憧れたヒーローたちは絶滅してしまうかもしれない。だから、彼らからフォトグラファーという職をもらった私がいまできることは、彼らが消えていなくなってしまう前にひとつの記録として写真におさめ、外の世界に紹介しながら、彼ら自身がその姿を何かしらのカタチで保っていきたいと思えるよう伝え続けていくことなんじゃないかと思っている。

 

ついでにヨシダナギさんが撮った東北の山形県PR動画も貼っとく。こういうものづくりの現場も少数部族と同じく、何かしらアクションを起こし続けて大事に残していってもらいたい。


ヨシダナギ初監督作品『colors Yamagata Crafts』┃山形県ものづくりPR動画

世界のシワに夢を見ろ!/高野秀行

世界のシワに夢を見ろ! (小学館文庫)

ヤングチャンピオンに連載されたコラムのまとめの単行本化のちの文庫版。青年漫画雑誌だからか、高野さんかなりテンション高めな内容。

何か読むもの貸して〜と寄ってきた娘に渡したら、最初はゲラゲラ笑って読んでいたけど、下ネタエロネタが出てくるとすっと本を閉じて黙って返却してきました。まだ刺激強かった?ゴメン。

高野さんは「人一倍トラブルやアクシデントに出会う”体質”」とのことですが、世界の“シワ”たる辺境にこんだけ足を運んでいたら、命がけの旅にたくましくもなるよなぁと思う。

そうそう、まえがきに書かれてあった

アメリカ化が進むと、世界はのっぺりする。
イメージで言えば、先進国と大都市を中心に、みんながせっせと大地にアイロンがけをしているようなものだ。どこも同じように清潔で快適でおしゃれで便利になる。では、アイロンがまだ行き届いていないところはどうかと言うと、これはシワくちゃだ。昔からシワだらけだったのが、さらに中央部からの、まさに「シワ寄せ」を食らっているからたまったもんじゃない。

という、辺境や僻地を”シワ”と例えるところがお見事。

ちょっと前に南国に住む叔母が、飛行機と新幹線を乗り継いでこの遠き雪国にやってきたときに、「こんなに遠くに来たのに、イオンもユニクロもツルハもイエローハット眼鏡市場もあって、うちの近所と同じやん」と言われたことが、なんというか申し訳ない気持ちになってしまったことを思い出しました。うん、快適便利なんだけどつまんないよね。南国の実家も、この雪国もアイロンがけされてしまったんだよ。

本の話から脱線してしまいましたが、そんな世界中の”シワ”で出会った衝撃的な出来事満載のコラム集の中で、一番印象に残っていて恐怖を感じたのは「中国奥地のバス旅行話」で、本を読みながらも、もらいゲロしそうになった経験は初めてです。恐るべし世紀末バス。

 

 

鋼鉄都市/アイザック・アシモフ

鋼鉄都市

ニューヨーク・シティの刑事ベイリと、宇宙からきたロボット捜査官R・ダニールが宇宙人惨殺事件の捜査に乗り出すバディもの。

最初にハヤカワSFをむさぼり読んでいた高校生の頃以来の、かなり久々のアシモフ。あの頃は海外SFっていってもどれから読んでいったらいいのかわからず、とりあえず三巨匠のアシモフ、クラーク、ハインラインからいくかと、アシモフを読んでました。『サリーはわが恋人』と『我はロボット』あたりはうっすら記憶にありますが、ほとんど忘れているので読み返したいな。

アシモフは設定も科学的な説得力もしっかりしている分、真面目というか堅苦しいというか、冒険的なエンタメ性はあまりない印象なんですが、『鋼鉄都市』はミステリーも入っていて、ロボットのダニールが唐変木なんだけど決めるときは決めるニヤリ☆なところが美味しいキャラだった。

捜査を続けていたら、邪魔するものが現れ、それを追っかけていったら犯人に当たったという、最後はちょっとあっけなかったかな。ようやくロボットの相棒と総合理解し合えたところで終わるので、これからなのに〜と思いきや、このコンビに『はだかの太陽』という続編があることをあとがきで知る。また近いうちにそちらも読みましょうねー。

福島正実さんの翻訳、意味はわかるんだけどなんて読むんだっけ?という漢字が多くて、義務教育〜高校の国語の漢字勉強をサボっていた自分が情けない。今さらながら読んでいてつまずいたところはノートに書き出して辞書で読みを調べたり。

舞妓さんちのまかないさん/小山愛子

舞妓さんちのまかないさん(1) (少年サンデーコミックス)

青森から舞妓さんを目指して京都にやってきたキヨとすみれ。舞妓修行に挫折したキヨは屋形のまかないさんになって、みんなの毎日の食事を作る。一方キヨの幼なじみのすみれは、努力が実り「百はな」として念願の舞妓デビュー。華やかな花街の舞台裏、普通の日のごはんを通して、温かな人間模様が描かれるお台所物語。

可愛い。このひと言が一番最初に出てくる食漫画。

萌え系絵の「照れ恥ずかしい顔」にチッと舌打ちしちゃう私が、この漫画の「照れ」は可愛いと素直に思う。プリン食べたい、餃子食べたい、ホットドック食べたいと、舞妓さんだけど10代の少女が、お座敷の帰りに「食べたい…」で照れ恥ずかしい顔になるのが良き。

そして少女達が5人以上出てきて賑やかに展開していく話が基本苦手なんだけど、この漫画はなぜか良き。登場人物にちゃんとした大人もいて、しっかり締まっているからかな。

屋形の台所がザ・昭和な感じで、冷蔵庫も小〜さくて、キヨちゃんは毎日大所帯の食事作りのために、大きなリュックを背負い買い出しに。図書館で料理本を借りてきて、幅広いレシピの習得に熱心です。えらい。それも屋形のみんなが美味しい美味しいって笑顔で食べてくれるから、いつも感謝してくれるから頑張れるんですね。

私は毎日大人数の家族の三食作って、毎食毎食めんどくさくてキーッッてなりますが、この漫画を読むとストレス解消です。この「いつも美味しいって言ってくれて感謝される」っていうのが、かなりファンタジーに思えちゃうんだけど。キヨちゃん幸せものだな。