夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

新九郎、奔る!/ゆうきまさみ

新九郎、奔る! (1) (ビッグコミックススペシャル)

戦国大名の先駆け、のちの北条早雲となる伊勢新九郎の物語。

月刊スピリッツは近郊の本屋で見かけないので、ずっと単行本化を待っていました。

私は高校で日本史を専攻しておらず、戦国より前の中世は、同じような名前の人物が多くて混乱しやすく苦手でしたが、この漫画はとにかくわかりやすい!あの混沌とした応仁の乱を伊勢側からの視点で。官職名に名前のルビが振ってあるし、人物の描き分けは上手いし、多くの台詞が説明的にもかかわらず、なぜか夢中になって読める。特に文正の政変で、千代丸(新九郎)の伯父や両親が都落ちするのに、緊迫感あるなかでも随所に笑いを突っ込んでいて最高に面白かったです。漫画の成せる技はすごい。次巻も楽しみ。

 

わかりやすい読みやすいとの評判で、買ってはみたものの、積ん読中の呉座勇一著「応仁の乱」も、今なら読める!読めるぞぅ。

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

 

 

まぼろしの「日本的家族」/早川タダノリ(編著)

まぼろしの「日本的家族」 (青弓社ライブラリー)

自民党がやたらと押し付けてくる三世代同居、サザエさん的な日本の家族とは。7名の著者による総ツッコミ検証。読めば読むほど確かにまぼろしに見えるけど、うちの家族がまさしくその「田舎の」「伝統的な」「家父長制的ヒエラルキー」家族モデルに当てはまっているので泣けてきます。義母と嫁の犠牲の上で辛うじて維持されていることに気がついて!→義父よ。旦那が家事育児を積極的にしてくれるので辛さは半減ですが、家父長制的ヒエラルキーってやつ、娘の代には壊滅してほしいな。

現行の憲法24条はなんて素晴らしいんだろう。起草者のエピソードに感動しました。

どんな生き方をしても、それぞれ個人が自分の生をまっとうすることが、活力ある社会(そして税制)の基盤であるはずだが、例えば結婚していない、子どもがいない、などで自分を否定されたように感じ、肩身が狭い思いをする人がいる。それは決して日本の伝統ではないし、世界の常識でもない。

リアル・スティール/リチャード・マシスン

リアル・スティール (ハヤカワ文庫NV)

米ドラマ「ミステリーゾーントワイライト・ゾーン)」の脚本家であるリチャード・マシスンの短編集。といっても私は「ミステリーゾーン」をリアルタイムで見ていないけど、週刊少年ジャンプ連載の「アウターゾーン」は読んでいた世代なんですが、オチが効いていてよくまとまった名作揃いの短編集でした。印象に残ったとこだけ感想を。

 

表題作の「リアル・スティール
映画版はまだ観ていないけどこんな話だったのか?男の子とか出てこなかったっけ?と確かめたくてWikipediaを検索したら、映画のオチまで詳細にばらされてしまったので、渋々DVDをレンタルしてきました。明日にでも観ます。
この原作は全く違うお話だった。老いた主人公はフルボッコにされて、くたびれ損だけで、泣けてくる。

 

「秘密」
婚約者が結婚前に教えてくれた先祖代々伝わる秘密とは…。
実は明智光秀の子孫だったとか、ブルートゥスの子孫だったとかで色々作れそうです。

 

「象徴」
ブラッドベリディストピアSF「華氏451度」に影響を受けて書いた短編だそうで、すべてが予定通りに進められている社会、社会規律だけを守り、変化を排除する。ただ、ただ閉塞感が漂うお話。

「おま★★」
短編集一の問題作。タイムスリップした未来の地球の食事とは、すべてチューブで摂取する状態だった。そこに過去から主人公が持ち込んだ食料を、隠れてむさぼり食う未来人の描写、禁断の食事をとるおっさんがとてもいやらしくていやらしくて、キモイ描写がピカイチでした。爆笑SF。邦題も際どい。

 

「最後の仕上げ」
これこそ「アウターゾーン」でミザリーが「◯◯は怖いですねぇうふふ」とか言って終わりそうなやつ。

 

 

 

 

 

 

 

リンカーンの夢/コニー・ウィリス

リンカーンの夢 (ハヤカワ文庫SF)

南北戦争の物語を書き綴る作家の資料調査助手ジェフは、あるレセプションで旧友の彼女であるアニーと出会う。精神が不安定なアニーは毎晩奇妙な夢に悩まされていた。その夢は南北戦争の光景の中で、誰かと対話しているのだ。アニーの夢の謎を解くために2人は古戦場跡を旅するが…という歴史SF。

コニー・ウィリス初期の小説で現在は絶版のところを古書店で入手。でも、私が小学生の頃からつけている(変態の自覚あり)読書記録によると、高校生の時に図書館で借りて読んでいたようだ。えー全然覚えてない。記録してても感想なしだとホントに忘れますね。

リンカーンの夢」とは不思議な夢、予知夢という意味合いで使っていて、実際に作中でアニーが見る夢は過去にリンカーンと敵対した南軍のリー将軍がみている夢。その夢は大事な人や多くの兵を救えなかった後悔ばかり。敗戦の将とくると、日露戦争の乃木将軍や西南戦争の西郷どんをイメージしながら読みました。これはアメリカ版「耳なし芳一」だな!

メンヘラなアニーを押し倒したいのに我慢して最後まで紳士的なジェフ。切ないラストまで読むと、今までセクションの最初に出てきた南北戦争の話が伏線だと気がつき、読み返していきたくなります。

現在のアメリカでは、リー将軍銅像が黒人差別や奴隷時代の象徴として、撤去運動が起こるなど揉めているニュースを聞いたので、「リンカーンの夢」はいい話なんだけど…複雑な気持ちになりました。

七人のイヴⅠ/ニール・スティーヴンスン

七人のイヴ ? (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

突如、月が7つに分裂し、その月のかけらがやがて衝突を繰り返し、2年後には無数の隕石となって地球に落ちてくると判明する。その結果、5千年は続く灼熱地獄が起こり、地球上の全てが不毛の地となるだろう。人類の種を残し、宇宙に避難するため各国政府は協調し、国際宇宙ステーションを核とした「方舟」を作ることになるが…というお話。宇宙ステーションのロボット工学者ダイナと、地球で科学啓蒙家として人気の天文学者デュボアを軸に話が進む。

全三冊で完結の予定だそうで、一巻目は宇宙ステーションの増長目指して各国がロケットをバンバン打ち上げ、ひたすら登場人物が増え途中でわからなくなりつつも、人類全滅まで2年のカウントダウンから1年目で終わるので地上の混乱もまだまだ少ない状態。これが二巻目には阿鼻叫喚の混乱が始まるのかな。

カウントダウンにスリルがあり、綱渡りな状態の描写が上手い。それも作者の科学的検証がしっかりしているからリアルに感じる。ちょっと言い回しが長いとこもあるけれど。

「七人のイヴ」ということは、これから七人の女性が主役になっていくのだろうか。

主人公ダイナはダクトテープ片手に仕事に励む頑張り屋、よく出てくるアメリカンジョークは意味不明だけど、プロフェッショナルでさばさばしたポジティブな女の子なので、悲壮感を感じられず読めた。

2年後に絶滅という事態、私なら家にこもって蔵書をひたすら読みふけるか、故郷の海辺の街に帰るか。でも流通止まって飢え死にしそうだ( ̄▽ ̄;)

この事態に株が暴落するのはわかるけど、飛行機が普通に飛んで、ホテルのスイートなど運営が続いているのが謎でした。

まあ、細かいことは置いといて、続きに期待です。