夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

アルテミス上・下/アンディー・ウィアー

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

月面都市アルテミスでポーター(運送屋と密輸)として働くジャスミン(26歳)が、おいしいもうけ話を持ちかけられて、あれよこれよと殺人事件に巻き込まれ、知恵と勇気と仲間とで困難を乗り越えていくというお話。

『火星の人』アンディー・ウィアーの新作!待ってました。あいかわらずポジティブでさばさばとして頼もしい主人公で嬉しい。今度はギャルで溶接工ときました。火星で芋栽培の次は月面真空DIY。そして主人公達が凄いことをしているのは分かるけど、いまいち機械の絵面が思い浮かべれないのも前作と同じ。帯によると早くも映画化決定だそうで、読んでもわかんないけどきっと映画で上手く表現してくれるはず〜と映画の完成が楽しみです。ジャスミンは誰が演じてくれるのかなぁ。かなり(性に)奔放な女子という設定も残るかな。

赤道に近いということでケニアが宇宙産業の立ち上げに成功し、アポロの月面着陸地点が観光名所になっている少し先の未来(2090年あたり)。経済や産業の仕組みが細かくてとてもリアルに感じました。でも2090年ってもう私は生きてないなぁ。

 

 

 

レッスンバッグ

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今月に入ってからバッグ3作目。やたらと作りまくっていますが、袋物をずっと作りたい〜ああしたいこうしたいが溜まっているのだ。

趣味のサークルに持って行くレッスンバッグを作りました。この布もバッグにしようと二年前に買ったやつ。(二年間据え置き)

作り上げてこうして写真を撮ってみると、持ち手は紺一色で良かったかなとか、差し色のタグをはさむべきだったなとか、反省点ばかりです。むきゃー

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初めてトートバッグのチャック付に挑戦。うっかり縫いかけてミシン針が折れる。

今回参考にした本はこちら
型紙なし、ほぼ直線でわかりやすく良い本。小旅行用のトートバックの寸法変えて作ってみました。 

 

月の部屋で会いましょう/レイ・ヴクサヴィッチ

月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)

初めてのSF作家さん翻訳本で、33編もの短編集。ひとつひとつが10ページ未満なのでどんどん読めるかと思いきや、中盤に差し掛かってくると疲れてきたり、やや混乱しました。あまりにも設定が素っ頓狂で。

一番手の『僕らが天王星に着くころ』。足下から体の皮膚がゆっくりと宇宙服になり、頭のてっぺんまで宇宙服に覆われると、宇宙に飛んでいってしまうという奇病にかかる人々。設定からして何じゃそりゃ!?と驚愕しつつ、ごく普通の彼氏彼女が「手を離して〜」「まだ行くな!」って最後の別れをしている頃には、感情移入して目元うるうるという。体が宇宙服になるなんてバカバカしいのに、みごとにやられた感じです。

『ふり』、『ささやき』のように、最後の一行で怖っ!とぞっとしたらバタンとドアを閉じられてしまい、後は想像におまかせ(もう怖い想像しかできない)となるような、ホラーな短編もあり、読むのもいやになってくるぐらい描写がやたらグロいのもあり。本当に多彩な短編集でした。

宇宙とは、独学の科学者でも物事を解き明かせる場所、謎の解決が可能な場所、すべてを知ることのできる場所、論理が支配する場所。

発想が常に逆転してるのね。

「最前線の映画」を読む/町山智浩

「最前線の映画」を読む (インターナショナル新書)

町山さんの本は出版されるやいなや本屋にかけこんで購入していますが、どんどん出版されるのに読むのが遅いので積ん読が〜と嬉しい悲鳴。今月も新刊を2冊買ったよ。

さて、『「最前線の映画」を読む』は、ここ2年ほどの間に公開された映画の解説本。映画を観ただけでは判断できなかったBGMの歌詞と、名作からの引用部分の解説がありがたかったです。西洋絵画も同じなので、もう文化なんだろうけれど、特に洋画は象徴的表現(寓意)や小道具に色々ヒントが隠されていることが多く、読み解けた時の快感ったらたまりませんがな。町山さんのお陰で鑑賞後脳内でぐるぐるしていた謎が解けました。といっても取り上げられている20作品のうち、劇場で見たのは3作だけですが。順次レンタルで追いかけて読み返すのが楽しみです。この本、シリーズ化して数年に一度出して欲しい。

ブレードランナー2049』の“高く白い噴水”と
ベイビー・ドライバー』の曲の選択と
『メッセージ』と聖書的表現がわかってスッキリしました。

そしてまた『ベイビー・ドライバー』のサントラを聴き直したくなった。

『ワンダー・ウーマン』の解説、これが特に深すぎる…!

ウォー・ヴェテラン ディック中短編集/フィリップ・K・ディック

ウォー・ヴェテラン―ディック中短篇集 (現代教養文庫)

ディックの初期短編6作品を仁賀克雄氏が訳しまとめたもの。社会思想社・現代教養文庫も今はもうなくなったのでレアな古本、でもよく古書店で見かけます。

『髑髏』“ミイラ取りがミイラになる”まんまの話だけど、ミステリアスで良く出来たSF短編だと思う。

快適な生活必需品の素材となる希少物質を得るために、他の星に攻め込んでいく人類。夫が招集され戦死、息子も戦死、そして女性も招集されて…。誰も居なくなった地球という皮肉の効いた『生活必需品』と、人類は他惑星に植民していくが、やがて戦線が怪しくなり制圧した原住民から反乱を受ける『トニーと虫かぶと』の2つが印象に残りました。ディックはいつも戦争の恐怖と巻き込まれる人の視点からSFを書いていて、誰一人英雄なんて出てこない。