夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

怪獣記/高野秀行

怪獣記 (講談社文庫)

トルコ東部のワン湖で謎の巨大生物ジャナワールの真実に迫るノンフィクション。ネッシーみたいな怪獣がいるというオカルトな情報を元に、とにかく現場に行ってみようと、フットワークも軽く飛行機に飛び乗りトルコで突撃取材を敢行。個性的なガイドと運転手に振り回されながらも、ジャナに関わる人達に垣間見える政治的要素、そしてイスラム復興主義とクルド問題。ワン湖を一周しながら、やっぱりジャナはフェイクだったのかとあきらめかけたその時!最後は鳥肌が立ちました。

毎度のことだけど、高野氏の本はあとがきの後日談がすごい。プハァ面白かった〜と満足して、さらに上を行く後日談。今はそんなことになってんのと未来に繋げるわくわく感がたまりません。

ちょうど読後にワン湖の湖底に古代遺跡発見とナショナルジオグラフィックサイトでみかけてさらに興奮しています。怪獣と古代要塞とはロマンが広がるね。

 

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

ユービック/フィリップ・K・ディック

ユービック

ディック作品の中でも傑作と名高い「UBIK」。
予知能力(プレコグ)、読心能力者(テレパス)、覗き屋(テイープ)、念力移動屋(パラキネテイスト)、死体蘇生屋(リサレクター)、物体賦活屋(アニメーター)とわんさか超能力者(しかも衣装が奇抜でキャラ立ちしてる)が登場して月面に集結し、幻魔大戦でも始めるのかと思いきや、爆弾が破裂して半数のキャラ死すという前半から、がらっと変わってあらゆる物が退化する世界からの脱出劇となる後半。先が読めないので、ディック暴走車に乗るがまま終着点に連れていかれる感じ。いやいやサスペンスフルで面白かったです、ジョーよく頑張ったよ!

半死者と話せる安息所など、死ぬに死にきれないディストピア。世界の退化をくい止めるのはユービックスプレー缶でプシュー!などの設定も面白いのですが、一番印象的だったのは、家電や部屋のオートロックまで小銭(チップ)を要求する未来都市。そんでもって主人公がジョー・チップという名前だったりで皮肉だ。なにかとお金にこだわったお話でしたね。

かなり前に古本屋で購入したので、表紙絵は今のスタイリッシュなユービック缶(これはこれでかっこいい)でなく、異空間に謎の男がいる不思議な絵(渡部 隆氏作画)のやつでしたが、読み終えた後に意味がわかるという素晴らしい表紙絵だなあと思います。こっちの方が好き。

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ブレードランナー2049/Blade Runner 2049

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映画館で字幕版を観る。

上映時間およそ3時間、帰宅してネットで前日譚の短編3つと、町山さんの解説などで復習。ほぼ1日脳内ブレランで幸せでした。

これから観られる方は劇場パンフと、wikipediaはもろにネタバレしているので注意です。

いやあ、感想って何を書いてもネタバレになってしまいますが、前作の曖昧なところを丁寧に繋げていき、小道具も前作を彷彿させるものばかり。そんなドゥニ監督の誠実さに感嘆し、画面の空気の表現が絵画的で惚れ惚れしてしまいました。この監督はホントに凄いです。あと、人造人間であるレプリカントがせつなくて、涙を流しながら殺しあうので、胸が締め付けられました。

ディックファンとしては、主人公のブレードランナーが”K”(フィリップ・K・ディックのK)と呼ばれ、羊の折り紙(電気羊)が出てくるのでにやけてしまい、あんなに進化した未来でも、紙の本がちゃんと出てくるのが嬉しかった。

そしてヒロインが電影彼女という設定、儚すぎて泣けてくる。アナ・デ・アルマスの萌えキャラ的な、超タヌキ顔は印象深かったです。

これは”レプリカントは二次元嫁の夢をみるか ”なんだな。

幻獣ムベンベを追え/高野秀行

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

仕事で疲れ果てて、ヨボヨボと蒲団に潜り込み、文庫本をひらいて高野さんにアフリカのコンゴへ連れて行ってもらう秋の夜長。最高でした!

さて、サブキャンプへ向けて出発である。空は晴れ渡り、綿をちぎってばらまいたようなふかふかした雲が青の中に浮かんでいる。日本では見たことのない形状のため、われわれはこれに“コンゴ雲”という安直な名前をつけている。いかにも手触りがよさそうで、しかもすぐそばにあるような感じがするので、手を伸ばしたくなったりするくらいだ。

コンゴ雲をあれこれ想像して楽しむ、これまた読書の幸せ。

さてさて、本の紹介をすると、いるのかいないのか誰もわからない伝説のUMA「モケーレ・ムベンベ」を探しに、高野秀行率いる早稲田大学探検部11人が、コンゴ奥地のテレ湖へ行くという壮絶なサバイバル78日間の記録です。果たしてネッシーに似ているという、怪獣ムベンベは見つかるのか?

密林の奥地のテレ湖へ向かうため、異国の地での交渉も大変そうでしたが、念願のテレ湖にキャンプを張った後はムベンベの姿を探して、さほど特徴のない湖をぼっーと眺め続けて24時間監視(めっちゃシンドそう)、赤道直下で不衛生な環境下、次々とマラリアに倒れてゆくメンバー。相次ぐ機械トラブルに食糧難。猿、ゴリラ、カワウソとなんでも食べちゃうチーム早稲田。ゴリラを解体、食する描写はかなり衝撃的で、ほぼ人食。

命がけの探検こそ、かなり高度なスキルを必要とするんだなぁと改めて感じました。そしてムベンベを幻獣と記すタイトルが逸品。

そういえば子どもの頃、「水曜スペシャル川口探検隊」を夢中で見てたっけ。今も「クレージージャーニー」がたまらん好きな自分。まるで成長なし。なので高野さんの体験談はどんぴしゃです。次はトルコに連れて行ってもらうんだあ。

読書狂の冒険は終わらない!/三上 延 倉田英之

読書狂の冒険は終わらない! (集英社新書)

ベストセラー作家であり「読書狂」の2人が本について語り合う唯一無二のガイドブック。

読んでいて楽しかった。場所が居酒屋なら隣に座ってずっと聞いていたい感じでした。それにしてもお二人の蔵書数と読書量がすごすぎる。私はとりあえず数が読めれば満足で、初版とか何版だと載っている載っていないなどコレクションするまでは手が回っていないです。表紙が違うだけの同じ本を何冊も集めるとか、ビブリオマスターの道は果てしない…。

これだけジャンルを問わずに本を紹介してくれていると、未読だけど「あー、あの本のことね」とわかるだけで、この本の膨大な海をちょっとは把握できてきたぞと嬉しくなる。あとはタイトルを知っているじゃなくて、読み終えたを目指したいね!

そして、お二人ともとても早熟というか、小学生の頃から横溝と山田風太郎を読みはじめているのにびっくり。前回の「ベイビー・ドライバー」でも書きましたが、娘と映画や本の話ができるのは嬉しいけれど、小学生にどこまでOKなのか常に悩みます。いずれ知ることだろうし、少しずつ慣らす形ならまあいっかーと思ってますが。