竹書房からイスラエルSFに続く、現代ギリシャSF傑作選。アテネをテーマにというお題があったらしく、アテネの近未来SFという縛りがあるため宇宙には行かない。
近未来のギリシャの旅は、まぁまぁディストピアで気が滅入りました。でも移民、気候変動など逃れられない社会情勢を丹念に盛り込んでいて、その世界で登場人物はクールに生きているのがカッコいい。
◼︎ローズウィード/ヴァッソ・フリストウ
海面上昇によって水没した都市をテーマパークにしてツアー組んで稼ぐんじゃあ!という話。うん、たくましく生きたい。
◼︎社会工学/コスタス・ハリトス
ギリシャの区画ごとにナビゲーターのAR(拡張現実)が配置されているのが面白い。大天使ガブリエルとか梟とか。
◼︎人間都市アテネ/イオナ・ブラゾプル
「人間は都市の束縛から解き放たれた」人文主義経済社会。都市は移民を受け入れて労働力を安く酷使するだけ。
◼︎バグダッド・スクエア/ミカリス・マノリオス
VR(仮想現実)で不倫…うーん。
◼︎蜜蜂の問題/イアニス・パパドプルス&スタマティス・スタマティス・スタマトプロス
私は果樹農地が多い雪国にいるので、この気候変動でミツバチがいなくなって受粉がうまくいかず大変なことになっているのはよくわかる。ミツバチの代わりにドローンを動かす話。ギリシャSFは話のオチとかドラマより、設定、目の付け所がいいのよね。
◼︎T2/ケリー・セオドラコプル
列車に乗って妊娠検診に行くだけの話なのに、格差社会ひどい。
◼︎われらが仕える者/エヴゲニア・トリアンダフィル
11の短編の中で、一番人物の心理が情緒的に描かれていた。夏の観光地の話。
◼︎アバコス/リナ・テオドル
インタビュー形式の短い短編。圧縮宇宙食のような製剤ですけど、脳内再生では素敵な食事環境、味覚をご用意していますよ〜という話。
◼︎いにしえの疾病/ディミトラ・ニコライドウ
不老不死というか長命種になってしまった人類にとって、一般的な老衰への恐怖を描いている話。ミステリー仕立て
◼︎アンドロイド娼婦は涙を流せない/ナタリア・テオドリドゥ
アンドロイド娼婦の体に現れる真珠層?がいまいちよくわからなかった。
◼︎わたしを規定する色/スタマティス・スタマトプロス
戦争によって色彩が失われた世界。